高島トレイル縦走記(1日目)
今回の高島トレイルでの一番の敵は暑さでした・・・。
最初に書きますが、全線スルーハイクの予定でしたが、およそ半分の水坂峠でリタイアしてしまいました。その理由は本文内で詳しく書きますが、ザッと書くと、その一番の理由は前述の通りで想像以上の暑さでした。次に水の制限、騙しピークの多さ、想像以上のアップダウン・・・等と続きますが、結局は暑さで熱中症の一歩手前までいったため、山中でぶっ倒れる前に下山を決めました。その辺の経緯は本文にて・・・。
まずは、今回歩いた高島トレイルについて書きます。まぁ、検索してこのサイトに辿り着いたという人には不要だと思うので、飛ばして読んで下さい。
正式名称を「中央分水嶺 高島トレイル」といいます。その名の通り、中央分水嶺を辿るトレイルです。距離はおよそ80kmあり、滋賀県の琵琶湖の北西にあります。ここで「中央分水嶺」って何? という人の為に簡単に説明すると、まず「分水嶺」とは、文字通り「水を分ける嶺」です。日本にはこの「分水嶺」がたくさんありますが、ある場所に落ちた雨が太平洋側に流れるのか、日本海側に流れるのか、その境が日本の背骨とも言える「中央分水嶺」といいます。その一部、滋賀県高島市にある(というか、通る?)中央分水嶺にトレイルを設定したものが「中央分水嶺 高島トレイル(以下、高島トレイル)」です。日本を代表するロングトレイルのひとつと言っていいと思います。
昨年はもうひとつの日本を代表するロングトレイルの「信越トレイル」を歩きました。コチラもおよそ80km(実際には起点の斑尾山からゴールの天水山まで80kmありません。アプローチルートを最大限に歩いてやっと80kmです)ですが、スタートはスキー場を登るという共通点はあるものの、ずいぶんと印象が違うな・・・と感じました。その辺の「信越トレイル」との違いなども本文では書いていきたいと思います。また、最後には今回リタイヤしてしまいましたが、反面得ることも沢山あったので、まとめ&反省点として書こうと思っています。
トレッキングデータ
2013年08月13日(火)〜15日(木) | |||
---|---|---|---|
コース |
【1日目】 【2日目】 【3日目】 |
||
山 名 |
【1日目】 【2日目】 【3日目】 |
||
累積標高 |
【1日目】(+)705m(-)285m 【2日目】(+)986m(-)1053m 【3日目】(+)438m(-)991m |
||
歩行距離 |
【1日目】6.459km 【2日目】15.433km 【3日目】9.523km |
||
所用時間 |
【1日目】9時間15分 【2日目】9時間46分 【3日目】4時間57分 |
注)途中でバッテリがー切れた為に、葦原岳から少し進んだ所までしかGPSを記録することが出来ませんでした。なので、赤字は途中までのデータです。
トレッキング
始発のバスが8時43分なのでノンビリ準備・・・。と言いたいところだけど、今回のトレイルは事前に公式マップを手に入れられなかったので、マキノ駅の観光案内所で売っているというウワサを聞きつけ、購入しようと駅に行ったらまだ駅のシャッターを開けている所でした。駅員さんに観光案内所の事を尋ねると、開くのは9時からということ・・・。バスの始発が8時43分・・・間に合わない・・・。仕方なくまだシャッターの閉まった観光案内所の前に高島トレイルのチラシが置いてあったので、それを貰う。見開きの内側にはかなりコンパクトだけど高島トレイルの地図がある。また、ポイント間の距離とコースタイムも書いてある。無いよりはマシだろうと思ったけど、結局は最後までメインの地図となった・・・。とは言っても他になんの資料もなかったのかというと、そんなこともなく、BE-PAL6月号の付録のトレイルブックと、カシミール3Dを使ってコース図を作成してGPSとiPhoneに移しておいたデータを活用した。そんなわけでコースに関しては特に不安も無かったのだけど、水場情報やエスケープルートの情報が皆無だったので、ちょっと不安だったけど、まぁ、行けばなんとかなるだろうとスタート地点に向かう。
念のため駅員さんに、駅前の駐車場に数日間車を停めるということを伝えておいた。
少し早いけどバスが来た。でも、出発は43分だった。お客さんは自分の他には昭和6年生まれというおじいちゃんがひとり・・・。おじいちゃんはすぐに降りてしまい、あとは貸し切り状態でした。
バスの終点である国境(くにざかい)バス停が近づくと、運転手さんが、スキー場の入り口まで行きましょうか? という提案があり。これから高島トレイルを歩くと言うと、スキー場の入口の方が近いですよということなので、提案通りスキー場の入口まで乗せて頂くことにした。まぁ、国境バス停からはほんの百メートルくらいだけど、緩やかな登りなので、ありがたかった。運転手さん、ありがとうございます。
登山ポストもあり、用紙と筆記用具もあったので、記入して投函する。本当は事前に用意しておくべきだったけど、色々バタバタしていて書く暇が無かった・・・。というか、3日前までは信越トレイルの南下ルートと高島トレイルのどちらにしようか悩んでいた。
今回の計画では4泊5日(予備日1日)で全線踏破予定。スタート時点のザックの重さは6日分(予備日含む)の食料と2Lの水をかついで約16kg。がんばって軽量化した成果は現れていたと思うけど、それはあくまで数字上のことで、実際には多少重くなっても妥協してはいけない装備もあることを知ることになる。それは追々書いていくことになると思います。
舗装された道路からゲレンデ内に入ります。この高島トレイル、先ほどのスタート地点から乗鞍岳へと繋がる稜線手前までは何の標識もありません。他の方の山行記を見ていてもほとんどの人が指摘しています。と同時に稜線までのルートを詳しく書いている方もいて、今回はそれらが大変参考になりました。先輩方、ありがとうございます。
実際には正解ルートはひとつではないようです。なので、自分自身もとりあえずはどの稜線に向かって行けば良いのか、ということだけは確認していて、あとはいきあたりばったりです。まぁ、その程度の考えでも、運良く最短のルートで稜線に取り付けたと思います。
ゲレンデに入ってすぐにリフトをくぐります。上の写真でケーブルが左右に伸びているのが見えると思いますが、そこをくぐると木道のようなものがあります。木だけでなくスキー板をつないでいる所もあります。はたして、これが道なのかは分かりませんが、とりあえずそこをたどります。少し行くと・・・
はたして、この尾根でいいんでしょうか? 右手方向にも尾根が見えます。でも、どちらも同じ尾根に繋がっているようなので、あまり気にせずにとにかく上に上にと進みます。この辺りは高い木も無く、太陽を遮るものはなにも無く、白い地面の照り返しもあり、結構暑いです。でも、この時はまだ想定内の暑さだったのでとにかく登ります。
・・・あっ! なんか書いてある・・・。しかもひっくり返った字で・・・。壊れたために誰かが修復してこの様になっているのだと思いますが、この後このような壊れた道標をたくさん見ることになる。
この道標、支柱から落ちてしまったようで、近くの木に無理やり取り付けられていた。登山道はまっすぐ続いている。しかし、道標によると乗鞍岳方向は少し左に向いているような気もするけど、その方向はヤブでルートがあるようには見えない・・・。なので、道標が少しズレて取り付けられているのだろうと解釈して真っ直ぐ進む・・・。
しばらく進むと、あれ? 稜線から外れてルートが下っている??? おかしいぞ! と思い、道なき道を稜線上に向かってよじ登る。稜線上に出てもルートらしきものは見えない。というか、鬱蒼とした木に阻まれて歩くのも容易ではないような所に出た。ここで初めてルートから外れている可能性を考える。通常ならば地図で確認すべきだけど、チラシに付いている小さな地図ではどうにもならなさそうだったので、ザックを降ろしてGPSで確認すると、明らかにルートを外れているのが分かったので、正しいルート方面に向かうとすぐに・・・
いま来た道を振り返って見ている。右端の電波塔が11時7分の電波塔。
この辺りは比較的平らなので、テントが張れそうだけど、近くに水場らしきものは無い。また、遮蔽物が何もないので風が強い時は無理か・・・。
下を見るとピンクテープが落ちている。ここの高島トレイルは黄色で高島トレイルと書かれたテープもあるけど、このようなピンクや無地の黄色いテープも沢山ある。というか公式のテープよりこっちの方が多いかも・・・。
自分が向いたいのは「黒河峠」、でも、そこに行くには「葦原岳」を通過しなくてはならない。手持ちの地図では葦原岳のピークがルートを外れたところにあるようには書かれていない。どうゆうことなんだろう??? と地図(ここで言う地図とは高島トレイルのチラシの中にあるもの)を見ながらウロウロ・・・。
結局行ったり来たりしている内に開けた鉄塔のある所に出た。
とりあえず葦原岳のピークを踏んだので、先ほどの丁字路に戻ってきた。これでやっと黒河峠に向かえる。今度は直進する。
このチョット先で二人組のハイカー(というより、何かの作業員のようにも見えた)がザックを降ろして休んでいた。その脇を挨拶をして通り過ぎる。
ところで水場は何処だ???
写真右奥が乗鞍岳方面。つまりここから出てきて左にトイレのある赤坂山への登山口のある場所から再び戻ってきた。次は右に向かう。自分の持っているガイドブックでは福井方面の方が水場が近い、とあるが、地元の人間ではないので左右のどちらが福井県側なのかよくわからないので感で進む。しばらく下ると、水の音が大きくなって、やがて・・・
水量も豊富でそのまま飲めそうだけど、浄水器を使用して約5Lの水をゲット。
水を汲みながらもう少し先に進むか、ここで一泊するか悩んだ結果。少々時間が早いものの一日目と言うことで今日の行動はここで終わることにした。実は密かに可能ならば「抜土(ぬけど)」まで行きたかったけど、ここからのコースタイムで約6時間ほどかかるようなので、今からだと到着が20時頃になってしまう・・・。んで結局、あっさりと諦めた。4泊5日の予定だけど、一日目に抜土まで行ければ3泊4日でもいけそうだけど、そのためには1日目のスタート時間を早くしないと無理だと思った・・・。
そうと決まればテントを張れる場所を見つける。
この高島トレイルには「テント適地」と呼ばれるところが何箇所かあることにはあるけど、一般的なテント場と呼ばれるものは無いです。基本的には幾つかのルールを守る必要があるものの、どこに張ってもいいこと(あくまで最低限のルールを守る必要はありますよ)になってます。
今回は林道脇のスペースにテントを張ることにした。ザックを降ろして石ころを除いて整地していると、一台の車が脇に停まった(ここは林道なので車がたまに通る)。ん? と思っていると一人の人が車を降りてきて、少し下の沢の所(水場の下流か?)で熊を見たので注意したほうがよい、と教えてくれた。じぇじぇ、と思ったけど、とりあえず教えてくれた方にお礼を言って、車は去って行った・・・。
さて、どうしよう? 多少は離れているとは言っても、近くに熊がいるのは間違いないので、時間を確認して、もう少し先まで行くことにした。高島トレイルは厳密なテント場が無いのを幸いに、どこか一張くらい張れる所はあるだろう、というなんの根拠も無い確信を持ちつつ、最悪は登山道上でテントに包まれば一晩くらいなんとかなるだろうと思い先に進むことにした。先ほどの沢でゲットした水をザックにしまっていると、先ほどの車がバックで戻ってきて、もし、下山するなら車で送ってくれるという、ありがたいことを言って頂いたけど、とりあえずもう少し先に進む旨を伝えて、お礼を言った。
水の気配のする箇所を過ぎると右手側に三国山(みくにやま)への分岐ある。400mくらいだからすぐだろうと、ザックを背負ったまま進む。ハッキリ言ってここは分岐点にザックをデポして空身、またはそれに準じる格好で山頂をピストンすれば良かった
分岐してすぐに小さな沢を渡る。ここでも水の補給は出来そう。
分岐してコチラ側は原生林なのか、森の密度が高い、と同時に、すごく蒸暑い。
最初はゆるやかな登りなので、これなら山頂のピストンもそれほど大変そうじゃないよなーって思っていたら・・・
この高島トレイルにはこのようなプレートがある。下部に「ポイント3」とあるが、これは公式マップと連動している。と、言っても公式マップを持っていなかったので、実際に歩いている時には気にもしなかった。というより、気が付かなかった・・・。ちなみに「ポイント1」は乗鞍岳、「ポイント2」は黒河峠にある。公式マップには「ポイント0」もあってこれは愛発越にあることになっているが、愛発越でこのようなプレートを見た覚えは無い。次回は是非確認したい。
分岐に戻ってきた。ここの分岐の道標も倒れている。恐らく赤坂山までの距離が書いていると思うけど、しゃがんで覗き込む元気は無い。正直言って暑さには強いハズの自分が暑さにまいっている。時間も時間だし、そろそろテントが張れそうな場所を選定しなくては・・・。
しばらくは足元が白いザラザラした砂地のような所を進む。今回は軽量化のために、普通の登山靴ではなく、トレラン用のローカットの靴にした。しかし、ローカットは問題なかったけど、この靴のソールは凹凸があまりないタイプなので、すべるすべる・・・。ここで一回と、3日目の水坂峠の手前の急な下りの一回の計2箇所で尻もちをついてしまった。荷物も軽く、どちらも結構な急斜面だったので、その後の山行に影響が出るようなこともなかったけど、ちょっとびっくりした。リベンジする時はちゃんとした登山靴のローカットにしようと思う。
ここが赤坂山でした。黒河峠から休憩込みで2時間30分。コースタイムは資料によってまちまちだけど、約2時間10分から25分くらい・・・。ってことはそれほどペースが落ちているわけじゃないのか? コースタイムはブログを書きながら確認しているけど、実際に歩いている時は暑さにやられて、コースタイムの確認もしていなければ、時計もほとんど見ていない。体感的にはコースタイムの2倍の時間がかかっているように思えた。
・・・本線に戻れた。でも、この後、背の高い草に阻まれて何度かルートから外れてしまう。この季節は暑さの他に、背の高い草も天敵となる。一応この辺りはそれまでに比べるとマーキングが数多く見られるけど、草に隠れていて確認しずらい。
一度本線から100m以上も正反対の方向に歩いてしまったことがあった。あまりにもマーカーが見当たらないので、一度確実な場所まで戻って事なきを得たけど、本線から100m以上も離れた所にテントのようなものがあった。素材自体は普通のブルーシートだけど、明らかにテントとして使おうとシートの端をビニールの紐で縛ってそれを木に括りつけている。そのときはそれほど気にしてなかった(厳密に言うと本線に戻るので必死だった)けど、いま考えたら中に・・・。
・・・背の高い草のせいで先も見えないけど、同時に足元も見えない。自分の場合は特に胸の前にカメラがあるので、さらに足元が見えにくくなっている。ルート上はずっと平らになっているわけではないので、たまに段差があると、気付かずにそのままストン! と落ちてしまうこともしばしば・・・。
ん? ブナ林の中の少し下ったところにテントを張れそうな場所を発見! 一度下った向こう側に風を避けるような盛土があるので風の影響もほとんどない! 時計を見るともうすぐ6時半、この辺りが限界だろうとここでテントを設営することにした。
一番低いところは平らだけど、水があったような跡がある。この季節以外はもしかして小さな池でもあったのかな? だとしたら夜中に、野生の動物が集まっていくる可能性もある。なので、気休めだけど、最下部ではなくて一段上がった棚のような所にテントを張ることにした。
完全に平らというわけではないけど、物が転がるほどの斜面でもないので、とりあえず、テントに転がり込む。マットを出す元気も無い。テントはこの日のために用意した「nemo meta 1p」軽さで選んだけど、ザックはテント内には入れられなかった。テント内をキチンと整理すれば入れられたけど、その元気も無い。ゆえにテント内の写真も無し。しばらく休んで、カップヌードルリフィルで夕食にする。
水は黒河峠で補給した5L、内訳は折りたたみ水筒3L。ハイドレーション2L。ハイドレーションの水はここまでに1.5Lほど飲んでしまったので、残りは折りたたみ水筒3Lとハイドレーション500mlの計3.5L。明日はつぎの水場の「抜戸(ぬけど)」まで持てばよい。
とにかく、想像以上の暑さで思うようにペースが上がらなかった1日目だったけど、夕方になって・・・と言うか明王ノ禿からの稜線上では風がある程度吹いていてまだ救われた。ハッキリ言って一雨来てくれないかと願っていたが、ザックの後ろにぶら下げていたてるてる坊主君が思いの外がんばったおかげで、その気配は全くなかった。ただし、暑くて想像以上に体力を消耗していたけど、この時はまだリタイアする気持ちは無く、テント内で食後、地図を見ながら今後の予定を修正していた。2日目は水坂峠までは行きたい、それには朝のまだ気温が上がらない内にどこまで行けるかにかかっていると思う。可能ならば、午前2時頃に出発して、昼の12時頃にその日の行動を終えられたら、という考えが何度も頭を過ぎったけど、明るい昼間でさえコースを確認するのが難しいので、暗闇の中をヘッドランプの明かりだけを頼りに歩くのは不可能だと思う。なので、明るくなる頃には出発したかったけど、身体を休ませることも重要なので、結局、2日目は5時起床、6時出発とした。